ゲシュタルト療法は、精神分析医フリッツ・パールズ(1893-1970)、ゲシュタルト心理学者であった妻のローラ・パールズ(1905-1990)、編集者であったポール・グッドマン(1911-1972)によって創られた、実践的な「今－ここ」中心の心理療法です。

クライエントが感じている人生観、人間関係、仕事、家族関係、身体的、精神的な「問題」の背景には、しばしば「未完了の出来事(Unfinised Business)」が影響しているとして、「今－ここ」の現時点に現れている「未完了の出来事」に焦点を当て、気づき(Awareness)をうながし、完了させていくことで葛藤を手放していきます。

またゲシュタルト療法は、人が「自分らしく生きる」こと、瞬間瞬間の感覚や感情に気づいて正直に表現できる自分自身であること、自分にとっての最良の選択を自由にできる自分自身でいること、自分の周囲の人々や環境と好ましいかかわりをもつ自分自身になることなど、自己成長、自己実現を目指す心理療法でもあります。

ゲシュタルト療法ではセラピー、カウンセリングのセッションを「ワーク」、クライエントを「ワーカー」、セラピスト、カウンセラーを「ファシリテーター」と呼びます。

クライエントは、セラピストが提供するセッションを受動的に「受ける」のではなく、「自分のワークをする」という能動的、主体的な態度を大切にします。そして、ワーカーとファシリテーターは役割として、単に相手を対象として一方的に捉えるのではなく、相手と自分を関係性として捉えること、すなわちオーストリアの宗教哲学者マルティン・ブーバーがいうところの「我－汝」関係での対話によって精神的に奥深いところで触れ合うことができます。

したがって、ファシリテーターが役割としての自分でいるのではなく、正直な自分自身でいることが、ワーカーが本当の自分に気づいていくことをうながし、ワークのプロセスを進行させます。